聖教新聞


2019年11月5日(月)の聖教

◆わが友に贈る

勇気のない人はいない。
出していないだけだ。
できない理由を
並べ立てるより前に
まず行動する勇者たれ!

◆名字の言

埼玉で開かれた座談会の「一人一言コーナー」。地区部長が手作りの大きな“マイク”を取り出すと、会場が一気になごむ。参加者は順番に回し、近況を語った▼これは、アルミホイルやラップの芯で地区部長が未来部員と一緒に作ったもので、名付けて「幸せのマイク」。いつもは発言を遠慮する人も、マイクを手に笑顔で話していたのが印象的だった▼体験発表、御書講義、学会歌の合唱、未来部や青年部のコーナー――充実した座談会のために準備すべきことは多い。内容や進め方など工夫したいことや改善したい点もあろう。しかし、“皆に喜んでもらいたい”“皆に元気になってもらいたい”という心は、必ず伝わっていく▼池田先生は、座談会での先師の振る舞いを紹介している。「牧口先生は座談会となれば、自分が真っ先に行かれた。1人が来ると、その1人とじっくり語り合う。2人目が来れば2人と、3人来れば3人と語り合う。そうやって懇切丁寧に希望の人間学を話していかれた」。どこまでも“一人”のために――これが三代会長の心である▼「大白蓮華」今月号の巻頭言に「前進・人材の年は、新たなザダンカイ革命から出発だ!」と。準備する人も、参加する人も、皆が新たな心で創立の月の座談会に臨もう。(道)

寸鉄

   難が大きい分、人を救う
 大境涯が開かれる―恩師
 「冬は必ず春」の実証を
      ◇
 男子部の日。広布の未来
 は君達の挑戦と成長に。
 闘魂燃やし正義を語れ!
      ◇
 御書「法華経は闇夜の月
 のごとし」。確信に満ちた
 “太陽の励まし”を同志に
      ◇
 レジ袋、来年夏から有料
 と。環境保護は意識の変
 革が不可欠。取組を皆で
      ◇
 国連・世界津波の日。防災
 への備えを再確認。震災
 の教訓を全員が命に刻み


【先生のメッセージ】

◆〈池田先生と共に 新時代を築く〉 人間の中へ! 励ましの光を 2019年11月5日

 青年ほど、強いものはない。青年ほど、頼もしいものはない。
 地涌の青年が一人立ち上がれば、正義の勝利の旭日は決然と昇るのだ。
 太陽の仏法のスクラムを拡大しゆく11・5「男子部の日」おめでとう! 皆の成長こそ、私の喜びだ。
 恩師に誓った広布の精鋭10万人の結集を成し遂げたのは、1961年。舞台は国立競技場であった。そのスタジアムが生まれ変わり明年、東京オリンピックパラリンピックのメイン会場となる。平和の祭典とともに、創価の若き世界市民も、新しい勝利の歴史を刻むのだ。
 今、男子部は、皆が「前進」、皆が「人材」との心意気で先駆している。「創価班の日」記念の総会、「牙城会」の師弟厳護総会、そして各方面の男子部大会が開かれる。いずこでも新しい力が躍動し、青年が青年を呼ぶ感動のドラマが生まれている。
                          * * * 
 11・12「女子部の日」も、妻と心から祝福したい。「白蓮グループ」の前進のなんと清々しいことか。御義口伝には「我等が頭は妙なり喉は法なり胸は蓮なり胎は華なり足は経なり」(御書716ページ)と説かれる。
 華陽の乙女は、一人ももれなく、最も尊貴なる妙法蓮華経の当体である。
 苦悩渦巻く社会にあって凜と胸を張り、希望と友情の花園を明るく朗らかに広げてほしい。
 そこにこそ、「幸福の光」「平和の文化の光」が輝きわたるからだ。
 戸田先生は教えられた。
 「世界の広宣流布と言っても、その根本は一対一の対話と座談会以外にはない。生活に根を張り、社会に信頼を広げ、民衆の中に飛び込んでいくのだ」
 人間の中へ――一人と会い、一人を心から励ます。共に信心の歓喜に燃えて立ち上がる。ここに変わらざる広布拡大の方程式がある。
 思えば、牧口先生は、軍部政府による弾圧にも怯まず、一人の青年の両親への弘教のために、福島県へ足を運ばれた。
 中核となる金の人材を見出し、育てよ――これが、今年、殉教75年となる牧口先生の師子吼であった。
 先師の魂魄が留められた福島の宝友たちは、私が大阪事件で戦っている時も、いわきを中心に大奮闘してくれた。永遠に忘れ得ぬ共戦譜である。
 今も、福島をはじめ、台風や大雨に被災された各地で、わが同志は復興へ懸命に献身してくれている。
 御本仏・日蓮大聖人が、「極楽百年の修行は穢土の一日の功徳に及ばず」(同329ページ)と、全てを御照覧であられるに違いない。
                            * * * 
 我ら創価家族には、青年が育っている。青年が続いている。ゆえに恐れるものは何もない。
 青春の無限の旭光とともに、一日また一日を勝ち抜き、未来を照らしゆくのだ。


【教学】

◆〈教学〉 11月度座談会拝読御書 法華経題目抄 2019年11月5日
 御書全集 943ページ12行目~13行目 編年体御書298ページ11行目~12行目
 成仏の大境涯を開きゆこう!

拝読御文
 妙と申す事は開と云う事なり世間に財を積める蔵に鑰なければ開く事かたし開かざれば蔵の内の財を見ずキーワード① 妙

キーワード① 法の功徳は絶大
 “法華経の意味も分からず、一生の間に一遍の題目を唱えただけでも、成仏の軌道に入れるか”
 “その通り。入れる”
 本抄の冒頭、日蓮大聖人は自ら問いを立てられ、たとえ一遍の題目であっても、無量の功徳力があると御断言です。お手紙を読んだ門下は、安心して信心に励めたことでしょう。
 その上で、大聖人は、「法華経の題目は八万聖教の肝心一切諸仏の眼目なり」(御書940ページ)と記されています。
 法華経の題目こそが、一切の仏の説法の根幹です。題目は、あらゆる衆生を成仏させる一法であると明かされています。
 この根源の功力を開くには、何が必要なのでしょうか。
 大聖人は本抄で、「成仏の軌道に入る根本は信である」(同ページ、趣意)と、妙法に功力があるといっても、その力を開き現せるかどうかは、「信」にかかっていると仰せです。
 本抄では「無解有信」(仏法の法門に理解はないが信心はある)、「有解無信」(仏法の法門に理解があるが信心はない)について触れられています。
 法門を理解することよりも、信心を深め、強めていくことが大切なのです。自分の生命が変わることが根本です。
 ゆえに、強盛な信心を奮い立たせ、地道に唱題を実践し抜いていくことが、成仏の軌道、つまり行き詰まることのない、幸福と勝利の人生を真っすぐに歩んでいくことになるのです。

キーワード② 自身に具わる仏性
 拝読御文は、妙法の「妙」の一字が持つ深い意義について示された一節です。
 ここでは「妙と申す事は開と云う事なり」(御書943ページ)と、「開の義」について述べられています。
 蔵の中の財宝とは、自分自身に具わる仏性のことです。それも特定の人だけでなく、一人ももれなく、誰もが仏性を具えています。
 この万人が具える宝蔵を開くことができれば、誰もが仏になることができます。つまり万人成仏が可能になるのです。そのための鍵が、妙法なのです。
 その上で、「開かざれば蔵の内の財を見ず」(同ページ)と仰せの通り、現実の我が身に仏の生命を体現しなければ、いくら仏性があるといっても意味がありません。
 自分自身に具わる仏性を涌現させ、自身が人間革命していくことが、わが生命を開くことにほかなりません。一人一人が現実の生活の中で、仏性を涌現させていくことで、仏法は「生きた宗教」となるのです。
 また、唱題を根本に、仏界の生命を涌現させた一人が、生き生きと仏法を弘め、他の人の仏性を涌現させていくことで、広宣流布も、立正安国も現実のものとなるのです。
 広宣流布とは、自分だけでなく、他人の仏性をも開き顕す、“自他共の人間革命の連帯”を広げゆくことなのです。

池田先生の指針から/苦しい時こそ題目
 御本尊は「功徳聚(功徳の集まり)」ともいわれます。その尽きることのない功力を引き出していく要諦は、自身の強盛な信心です。本抄(=法華経題目抄)に「夫れ仏道に入る根本は信をもて本とす」(御書940ページ)と仰せの通りです。真剣にして、地道な唱題の実践の中で、無限の功徳が現れるのです。題目を唱えれば、生命力が湧き、勇気が湧いてきます。
 「苦楽ともに思い合せて南無妙法蓮華経とうちとなへゐさせ給へ」(同1143ページ)です。苦しい時こそ題目。行き詰まったら題目です。
 戸田先生は、折々に語られていました。
 「御本尊への強い願いは、必ず通ずる。それには、条件が三つある。一つ、題目。二つ、題目。三つ、題目である」
 「題目の力は偉大である。苦しい業を感ずる生命が、あたかも美しい花園に遊ぶがごとき、安らかな夢のごとき状態に変化するのである」
 「題目は、真剣勝負で祈れば、必ず功徳となって現れる。真剣に祈れば、雑念は消え、広布の戦いで勝つことに集中できるようになるのだ」
 「負けてたまるものか! と、腹を決めるのだ。題目をあげにあげて戦うのだ。根本は題目だ。祈りである」
 一人ひとりが広宣流布に生き、幸福になる直道を戸田先生が教えてくださったのです。
                            ◇ 
 「妙と申す事は開と云う事なり」との御文は、「開の義」です。法華経こそが、仏教の大目的である一切衆生の成仏の道を開く、唯一の経典であると明かされています。
 妙法には、九界の現実の人間生命に秘められた仏界という胸中の宝蔵を開き、万人の生命を躍動させていく力があります。法華経が説かれる以前の諸経では、仏の究極の覚りである妙法という財宝を納めた「蔵」は閉ざされたままでした。蔵があるように見えても、その中身の財宝を見た人はいなかったのです。
 万人成仏を明かす法華経が説かれることによって、初めて諸経の蔵が開き、釈尊が真に説きたかった妙法という「財」が現れました。(中略)さまざまな経典で、仏という偉大な人格や、広大な仏の覚りが説かれていますが、本当の意味でその教えが万人に開かれていなければ、何の利益もありません。
 実際に、私たち自身の人生が変わり、現実の生活の中に仏と同じ尊極の境涯が現れなければ、仏教の真価は発揮されません。当時の仏教信仰は、自分の外に「偉大な仏」を置いて、その仏の功力を頼むだけの信仰です。大聖人の時代に流布していた「念仏の題目」は、まさにその典型です。これに対して、「法華経の題目」とは、自身の生命に具わる宇宙大の妙法の力を顕現し、成仏の大境涯を開いていくための題目です。(『勝利の経典「御書」に学ぶ』第20巻)


【聖教ニュース】

◆きょう11・5「男子部の日」 日本一の人材城を 2019年11月5日
 11、12月方面大会を目指し拡大に総力  リーダーが広布の最前線へ

 

 

新たな人材が躍動する埼玉・久喜圏の桜田部の友を、西方男子部長が激励(久喜市内で)

 きょう「男子部の日」を晴れやかに迎えた。
 1961年11月5日、10万人の若人が集結したことが淵源。若き池田大作先生が、恩師・戸田城聖先生の師子吼に応えて一人立ち、弘教と人材の大拡大で成し遂げた広布史に輝く金字塔である。
 この師弟勝利の精神を受け継ぐ男子部は今、11、12月に全国で行われる「方面男子部大会」へ、拡大に総力を挙げている。
 その原動力こそ、「部活・本部活」などの小単位の会合の充実である。各地で活発に開かれる集いには、男子部大学校生など“新しい力”が結集し、人間革命と広布拡大の誓いがあふれる。
 リーダーが小単位の会合という“広布の最前線”に飛び込み、自身の師弟の原点と、宿命転換の体験を確信を込めて語り、友に勇気の励ましを送る――そこから折伏・弘教の勢いが増している。
 池田先生は、小説『新・人間革命』第12巻「新緑」の章につづった。「人間の発心を促すものは、大きな会合よりも、むしろ、一対一の対話である」
 男子部は、小単位の会合や訪問・激励を通した、目の前の一人への徹底した励ましで、部・本部で勝利の核となる10人の一騎当千の人材を育てる「広布十傑」運動を大きく推進。「3万の折伏」を必ず成し遂げ、日本一の人材城を築きゆく。
                               ◇ 
 西方男子部長は、埼玉・久喜圏の桜田部の「部活」(10月30日、久喜市内)へ。
 10人を超える友が意気軒高に集い、皆が口々に広布に走る喜びと誓いを述べた。
 槇島亨部長がこだわってきたのは、「楽しく元気になる会合を続けること」。“何でも語れる場”を目指し、友の持つ悩みや課題を皆で共有し、励まし合う。また参加者が多くても少なくても定期的に集いを開催し、“大好きな同志に会える場”をつくり続ける。
 これらは、転勤続きだった槇島部長が、どこに行っても創価家族の集いから元気をもらい、仕事に、学会活動に挑戦できた経験がもとになっている。
 集いでは「SOKAチャンネル モバイルSTB」で池田先生のスピーチ映像を視聴。また、皆の温かな激励に御本尊を受持する決意を固めた友に、全員から大きな拍手が送られた。
 西方男子部長は、一人一人の近況に耳を傾け、全力で激励。「鉄桶の団結」で、皆が前進の歴史を開こうと望んだ。
 一方、鹿児島・鹿屋平和圏鹿屋本部の「本部活」(同29日、鹿屋市の鹿屋文化会館)には、岩田九州男子部長が出席。
 同本部は、4年半にわたり、毎週、「本部活」を開催してきた。
 当初は数人の参加者だったが、一回一回、企画に工夫を凝らしたことで参加者が増加。
 特に好評な企画が、教学のディスカッション。グループに分かれ、御書の一節をテーマに自身の体験や決意などを語り合う。この日も新来者が参加し、にぎやかな対話の花が咲いた。
 「教学が、どう仕事や生活に生きるのか。それが分かると、信心即生活の実感が深まり、歓喜が生まれます」と亀岡潤本部長。
 同本部では、信心の確信を深めて友人を入会に導いた男子部大学校生も誕生した。
 岩田九州男子部長は皆の奮闘をたたえ、わが地域から対話と人材の大波をと激励した。

◆日本管楽合奏コンテスト全国大会 関西創価小が最優秀賞 2019年11月5日

 


8年連続11回目の舞台となった全国大会で演奏する、関西創価小学校のアンジェリック・ブラスバンド(東京・文京シビックホールで) 

 関西創価小学校(大阪・枚方市)のアンジェリック・ブラスバンドが3日、東京・文京シビックホールで行われた第25回「日本管楽合奏コンテスト」全国大会(主催=公益財団法人日本音楽教育文化振興会)の小学校部門に出場。最上位の文部科学大臣賞に次ぐ、「最優秀賞」(上位12校が該当)に輝いた。
 全国から録音審査を突破した強豪33校が競った同コンテスト。関西小は、堀夢夏教諭の指揮で「フィエスタ!」(P・スパーク作曲)を披露した。
 難しい楽曲を見事に奏で、疾走感あふれるメロディーと勇壮な調べで聴衆を魅了。審査員からは「素敵な音楽作りでした。厚みのある豊かな響きが音楽のゆとりを感じさせます」等の講評が寄せられた。
 岸本千夏バンド長(6年)は「創立者や両親、支えてくれた方々への感謝の気持ちを演奏に込めました。今後も練習に励み、心と技術を鍛えて、“日本一”を目指します!」と語った。


【特集記事・信仰体験など】

◆〈私がつくる平和の文化〉第11回 生命の尊重 2019年11月5日
インタビュー 難民を助ける会理事長 長有紀枝さん

難民を助ける会理事長 長有紀枝さん

 「私がつくる平和の文化」第11回のテーマは「生命の尊重」。登場していただくのは、特定非営利活動法人「難民を助ける会」の長有紀枝理事長です。難民支援の経験を通して、全ての人の生命が尊重される世界を築くために、私たちが心掛けるべきことは何かを語ってもらいました。(構成=小野顕一、歌橋智也)

 私にとって1990年代の旧ユーゴ紛争での難民支援が、NGO活動、そして、研究者としての原点です。
 旧ユーゴは六つの共和国で構成されていましたが、独立を巡って戦火が広がり、大変な数の難民が出ました。私は91年から現地で難民の支援に携わりました。
 難民キャンプでいつも感じるのは、支援活動の「限界」と「可能性」です。人手や資金の制約もあり、助けられる人よりも、助けられない人の方が圧倒的に多い。求められたことに応えることより、断ることの方が圧倒的に多い。つまり「限界」だらけです。
 一方で「可能性」もあります。障がい者や難病の患者など、誰からも救いの手が届いていない人たちが必ずいて、私たちのような小さな団体でも、できることが必ずあります。また、政治や宗教などが絡まない日本人だからこそ、果たせる役割もあるのです。
 理不尽な状況の中で、人間の強さを感じる場面に出あってきました。よくお母さんが、わが子のことになると力が出るといいますよね。人間って不思議だなと思うんです。難民の中でもそういう方々と出会いました。
 本当につらい状況で、自分のことで精いっぱいのはずなのに、同じような境遇に置かれている他者への想像力が働き、力が出るのです。自分だけのことだったら諦めるけれど、苦しむ人たちのために自分を犠牲にしてでも声を上げる。私はそこに、人間の強さを感じます。
 難民支援の現場では、人を助けるためには、自分の命を守らなければなりません。そして、自分の命が大切だと思えることが、他の人の命も同じように大切にできる出発点だと思います。
 平気で他人を傷つける人は、自分の命を大切にされた実感がないのではないかと思います。もし子どもの頃から、誰かに抱き締められ、愛情を注がれていたら、その体験がどこかに残っているはずです。そういう中で育っていない人は、命の尊さを実感できないかもしれませんが、それが伝わるような関わり方をしていくしかないと思う。

●「諦めない一人」に
 先日、大学生から相談を受けました。世界では不条理なこと、非人道的なことが繰り返されている。それを断ち切るために自分も何かしたいけれど、何もできないのがもどかしい、と。
 この学生に私は、「一人の人間にできることは限界がある」と申し上げました。自分一人で何かしようと意気込んでも、大半のことは達成できませんから、「ああ、だめだった」と諦めてしまう。
 しかし一方で、世界の大半のことは、一人の人間の力から始まったのも事実です。「諦めない一人」がいたから、いろんなことが変わってきたのです。
 だから自分の力を過大評価しない一方、過小評価や卑下もしてはいけない。120%の力で一瞬で燃え尽きるよりも、“細く長く”でも続けるほうが、世界を変える力になるということを伝えたかったのです。
 リーダーが大きな仕事をして世の中が変わることは、もちろんあります。でも、その人が未来永劫存在するわけではない。世界を変えるというのは、一時的なことではなく、永続的な営みによって、もたらされるものです。だから自分を“永続的な営みの一部”と位置づけられる人が、実は強い人で、組織や世界を変えていけるのだと思います。
 “社会の歯車になんかなりたくない”と、私も学生の頃は思っていました。ですが、地雷除去活動中の事故で右手右足を失ったクリス・ムーンさんというイギリスの地雷問題の活動家の言葉を聞いて、考えが変わりました。“こんな体の僕でも、地雷の廃絶という大きな歯車の中で仕事ができることがうれしいんだ”と。それを聞いてハッとしたんです。確かに私たちは歯車の一部かもしれない。でも歯車だからこそ物事が動かせると。
 「たかが一人、されど一人」です。自分の立ち位置を客観的に受け入れながら、できることをやってバトンを渡し、連綿と続けていく。そういう人たちの集まりが、世界に変革を起こすのです。私は創価学会の方々も、そうした思いで日々、他者のために行動されていると思います。

●「得」ではなく「徳」を
 今、世の中の判断基準が「損か得か」になっている気がします。では、人としてあるべき生き方とは何なのか。
 私は「得」ではなく「徳」のある生き方が必要ではないかと思います。それも、人が困難に直面する中で見せた勇気とか希望に、私たちは心を打たれます。どんな立場の人でも、お金がなくても、病気で動けなくても、示すことができるそうした生き方の輝きは、必ず伝染するし、影響力は大きいと思う。
 徳のある生き方をするためにも、他者とつながる「心のスイッチ」を切らないでほしいのです。
 スイッチを切る=「私には関係ない」と思った瞬間に、全てのつながりはシャットアウトされます。反対に、スイッチを入れる=「関係ないとは思わない」のであれば、その時々にできることはあるし、あるいは、いつか、何かができる。できることが必ずあるはずです。
 「平和の定義って何?」と聞かれたら、私は「明日の予定を立てられること」と答えます。地雷原の周辺に住んでいる子たちに、大人になった自分の絵を描いてごらんと言ったら、足のない絵を描くんです。その子たちにとって大人になるとは、足がなくなることなのです。そういう苦難に思いをはせ、生き方を変えることも「平和の文化」だと思います。
 将来の計画を立て、未来を創造することは、実はすごい“特権”です。でもその貴重さには、なかなか気付けません。誰もがこの“特権”を持てるようにするためにも、「心のスイッチ」を切らずにいただきたいと思うのです。
 【特定非営利活動法人 難民を助ける会(AAR Japan)】1979年11月にインドシナ難民を支援するために相馬雪香(尾崎行雄の三女)の呼び掛けで設立。今年で40周年。国連に公認・登録された国際NGOとして、現在、世界15カ国で活動し、紛争や災害などでの緊急人道支援障がい者支援、地雷対策、感染症対策、啓発・教育活動等を推進する。97年にはAARが主要メンバーである「地雷禁止国際キャンペーン」がノーベル平和賞を共同受賞した。
 おさ・ゆきえ 東京都生まれ。早稲田大学卒。同大学院修士課程修了。2007年、東京大学大学院総合文化研究科「人間の安全保障」プログラム博士課程修了(博士)。旧ユーゴの難民支援、地雷禁止国際キャンペーンの地雷廃絶活動等に携わり、08年からAAR理事長。09年から立教大学大学院教授。著書に『入門 人間の安全保障』(中公新書)、『スレブレニツァ あるジェノサイドをめぐる考察』(東信堂)等がある。

池田先生の指針から
 大空よりも大きなものがある。それは私の生命である。
 大海原よりも深いものがある。それはあなたの生命である。
 全宇宙のあらゆる宝よりも尊いものがある。
 それは私たちの生命である。
 (池田大作「平和を! 平和を! そこに幸福が生まれる」から)

〈体験〉命は何物にも代えがたく尊い 18年の介護を経て
 母親の介護を通して「命」と向き合ってきた女性に取材しました。
                                                                            ◇ 
 東京・武蔵村山市の阿部たみ子さん。母が79歳の時、リウマチで1人暮らしが難しくなり、同居生活が始まった。やがて車いすが欠かせなくなり、介護が必要に。夫や娘と話し合い、「わが家は“楽しい介護”でいこう!」と決めた。
 一日中、家にいる母に、少しでも楽しく過ごしてもらおうと、指人形でコミュニケーションを取るなど、笑顔が絶えないように工夫を重ねた。優しく穏やかな母は、「ありがとう。幸せだよ」と、いつも笑ってくれた。
 しかし、年月を重ねるうち、いつまで続くか分からない介護に阿部さんはストレスを感じていった。トイレ介助の後に、ため息をつく自分。さらには、母をデイサービスへと見送った後の解放感――。阿部さんは自己嫌悪に陥っていく。
 そんなある日、“自分を許せない人は、人も許せない。ありのままの自分を肯定しよう”との言葉を目にし、阿部さんは自分に素直になろうと決めた。
 気分が優れない時は「怒っちゃったらごめんね」と伝えた。母にも“我慢しないで”と伝え、正直な気持ちを聞くように心掛けた。
 さらにリウマチが進み、母の指が不自由になると、リハビリを兼ねて、母との交換ノートを作った。
 「お母さんのおかげで、私も生きているんだよ」「お母さんの回復力はすごいって、お医者さんが褒めてたよ」など、母が喜ぶ言葉をたくさん書いた。
 母は、不自由になった手で一生懸命に「たみ子と暮らせて、幸せ」と、返事をくれた。お互い、面と向かうと言えないこともあり、うれしさが込み上げた。
 亡くなる直前、母はつづってくれた。「こんな良い娘はいないよ」。上手に書こうと、何度も書き直した跡があった。母と阿部さんのかけがえのない“生命のノート”になった。
 2015年9月1日、母は97歳で息を引き取った。安らかな臨終の相だった。多くの葛藤はあった。しかし、18年間の歩みは、まさに“宝の日々”だった。
 「『人は、若くて、健康で、何かができるから価値があるのではなく、命それ自体が、何物にも代えがたく尊い。そして、命それ自体に、生老病死の苦しみを乗り越える力が備わっている』。そのことを、母は自身の生き方を通して教えてくれました」
 母に学んだ生命の素晴らしさを胸に、阿部さんは今日も友のもとへ足を運ぶ。


◆〈信仰体験 with〉 読者と考える #学校へ行けない(投稿編) 答えは一つじゃない

 連載企画「with」では、今秋、「#学校へ行けない」をテーマに取材を続けてきました。前回(10月25日付)に続き、読者から寄せられた感想を紹介します。

◆〈未来部育成のページ〉 未来部リーダーの原点を紹介 2019年11月5日
 真心の励ましが一生の宝に

 未来部員の挑戦が光る秋、未来部担当者の励ましがメンバーの心の栄養となり、さらなる成長へとつながる。今回の未来部育成のページでは、連載「心に希望の語らいを」の拡大版として、未来部リーダーの原点や心に刻む池田先生の指導を紹介する。

●未来部長(高等部長兼任) 松野光晴さん
 徹して学び、行動する「勇気」。これこそ、一流の人物に共通する、人生で最も大切な美徳です。(中略)私はこの「勇気」の二字を、人類の宝である、君たち、貴女たちに贈りたい。そして、その勇気の翼、未来の翼で、世界を駆け巡ってもらいたいのです。
(『未来の翼』86ページ)

後輩を大切にと、信念貫く
 中学受験の勉強に励んでいた小学6年の夏、学校で、いじめを受けるようになりました。
 クラスでいじめられていた子が暴力を振るわれるようになり、心配になった私は祈って勇気を出し、彼をかばいました。すると、その翌日から私もいじめの対象に。小学校卒業まで仲間はずれにされ、無視されました。もんもんとしていた私でしたが、関西創価中学に入学後、創立者の池田先生が学園に贈られた「他人の不幸の上に自分の幸福を築くことはしない」との指針を知りました。「自分は間違っていなかったんだ」と、涙がこぼれ、生きる喜びと自信を取り戻しました。
 関西創価高校時代には、良い先輩に恵まれ、生き方が変わりました。
 バスケットボール部で私の一つ年上のキャプテンは部活と勉強の両立を目指し、信念を曲げずに行動する人でした。そして、折あるごとに池田先生の言葉を通して、祈りは絶対にかなうこと、悩んだ人が一番幸せになれることを教えてくれました。
 当時、将来に悲観的な私でしたが、先輩のおかげで夢を持てました。さらに、それまで勉強に真剣でなく、泣き虫で臆病でもあった自分を変えたいと思い、勤行・唱題を根本に勉学に励むように。
 すると、中学では最下位の方だった成績が、高校では上位までどんどん上がり、部活では、あこがれのその先輩からキャプテンを任せられたのです。
 新チームの出発の日には池田先生から、部の指針をいただくこともできました。
 ――負けるが勝ちだ。勝つばかりが勝負ではない。負けた時にこそ、本当の勝負ではないか、と。
 創価大学では男子寮の責任者を務め、学生部では折伏に励みました。池田先生を求めて頑張れば頑張るほど、先生と初めてお会いした、大学の入学式が鮮明によみがえり、自身の原点として生命に刻まれていきました。
 学園には「先輩は後輩を、弟・妹のようにかわいがって、大切にしていかねばならない」という合言葉があります。先輩にお世話になった私が、これまでずっと大切にしてきた信念です。
 世界を変えていけるほどの大きな使命が未来部メンバーにはあります。皆がその可能性を引き出していけるように、良い兄、良い先輩として支えていきます。

●副未来部長(中等部長兼任) 利倉弘さん メンバーを生涯見守る
 「大きなエンジン」をもっている人は、険しい坂でも、楽しみながら前進できる。「小さなエンジン」しかない人は、小さな坂でも、息が切れて苦しむ。勤行・唱題によって、自分の生命のエンジンが大きくなるのです。
(『希望対話』〈普及版〉275ページ)

●少年部長 佐保創一郎さん  指定に生き抜く人生を
 戸田先生以外の「師匠」を考えることができません。先生と出会えたことで、今の私があります。先生のおかげで、最高の人生を歩めました。世界の平和を目指し、世界中の人と出会い、友情を結ぶことができました。
 (『希望の虹』130ページ)

●女子未来部長(女子高等部長兼任) 先﨑和美さん
 先生なら、どうされるか、どうすれば、先生に喜んでいただけるか――。
 心に、この原点があるから何も迷わない。何も怖くありません。
 「師弟の道」とは、最高の「人間の道」です。正義の道であり、希望の道です。幸福の道であり、勝利の道です。
 (『未来対話』279ページ)

希望の大空へ師匠を求め
 中学生の頃、自信がなくて周りと自分とを比べてばかりいた私の目には、同級生たちが輝いて見えました。ですが、2年生が終わろうとしていた春の3月、かつてないお題目に挑戦し、景色が一変しました。
 祈っている間、私は小学校から東京の創価学園に通っていた日々を思い返していました。これまで何度も読み返してきた、創立者の池田先生のスピーチも頭に浮かび、学園生のことを信じ抜かれ、家族のように大切にされている先生の真心を感じました。
 気がついた時には、心の底から「先生に喜んでいただける自分になる」と、真剣に祈っていました。
 そうして迎えた学園での卒業式。出席された池田先生は私たち学園生に「君たちが勝利するためならば、私は、いかなる労苦も惜しみません」と話し掛けてくださいました。
 「生涯、師弟の道を歩んでいこう」――そう誓った私は、それ以来、悩みがあっても先生のご苦労を思えば小さなものに感じ、何事にも積極的に。勉学や吹奏楽部の活動、人前で堂々と話すことなど、自分の殻を破ろうと努力しました。
 創価後継塾のメンバーになったのは、そんな時のことです。
 会合では未来部担当の女子部の方々が歓迎し、部活や勉強などでの小さな頑張りを心から褒めてくれました。また、私の話を真剣に聞いてくれるなど、中学3年の私に尊敬の念をもって誠実に接してくださったのです。
 私は学会の会合に行くのが大好きになり、女子部のお姉さんたちに、祈っていることや感動したことなど、何でも報告するようになりました。
 そして、池田先生と自身の原点など、先生のご慈愛を伝えてくださる先輩たちとの触れ合いの中で、私自身にも使命があることを自覚。小説『新・人間革命』の「大河」の章の研さんなど師弟の精神を学ぶ中で、先生をより身近に感じられるようになりました。
 未来部担当者となった今、心掛けていることは、私が未来部時代に受けてきた先輩たちの励ましのように、未来部員一人一人を温かく包み、認めてあげ、少しでも師匠の心を実感できるように語っていくことです。
 未来の主役であるメンバーと共に池田先生を求めながら、皆が希望の大空へと羽ばたいていけるよう、勇気のエールを送っていきます。

●女子副未来部長(女子中等部長兼任) 榎本浩美さん 前を見つめ心に寄り添う
 青春には、嵐の日も、吹雪の日もある。険しい坂も峰もある。けれども、題目を唱える青年に、決して行き詰まりはありません。祈り抜く若人は、一つ一つを断じて乗り越えて、痛快な逆転勝利の劇を飾っていけるのです。
(『未来の翼』198ページ)

●少女部長 角田久美子さん   いつも笑顔の勝利の女王と
 君たちを、お父さん、お母さん、学会のおじさん、おばさん、お兄さん、お姉さんが必ずはげまし、ささえてくれます。世界の友が最大に期待しています。
 そして私が祈り、エールを送り続けます。(中略)みなさんの勝利もまた、私の夢だからです。(『希望の虹』194、195ページ)